クレウーサ

プリアモスの娘クレウーサ。フェデリコ・バロッチの1598年の絵画『アエネアースの逃亡』の一部。ボルゲーゼ美術館所蔵。

クレウーサ古希: Κρέουσα, Kreoūsa, ラテン語: Creusa)は、ギリシア神話に登場する女性の名。この名前は「王女」を意味し、ギリシア神話には同名の女性が4人いる。長母音を省略してクレウサとも表記される。

ガイアの娘

ガイアの娘にあたるナーイアスのクレウーサは、河神ペーネイオスとの間にラピテース族の王[1]ヒュプセウスと娘スティルベー[2]ダプネーを生んだ[3][4]

ヒュプセウスはアステュアギュイア[5]キューレーネー[6][7]テミストーの父[8][9][10][11]

スティルベーはアポローンとの間にラピテースケンタウロスを生んだが[2]、ダプネーはアポローンの愛を拒んで月桂樹となった[12][4]

クレオーンの娘

コリントスクレオーンの娘クレウーサは、メーデイアと離婚したイアーソーンと結婚することになる。しかし、メーデイアは呪いをこめた衣裳をクレウーサに贈ることによって復讐を果たす。この呪いにより、衣裳はクレウーサの肉体に貼りつき、脱ごうとするやいなや彼女を燃やした。アポロドーロスの『ビブリオテーケー』などではグラウケー(英語版)という名で知られる[13]

エレクテウスの娘

アテーナイエレクテウスの娘のクレウーサ[14][15]。母はプラークシテアーで、ケクロプス、パンドーロス、メーティオーンプロクリスオーレイテュイアクトニアーと兄妹[14]。姉妹たちはアテーナイを守るために死んだが、クレウーサは幼かったので助かった。クレウーサはクスートスと結婚し、息子アカイオス(英語版)イオーン[16]、娘ディオメーデーがいた[17]

エウリーピデースの『イオーン』ではクレウーサは重要な登場人物で、アポローンとの間にイオーンを、夫クスートスとの間にアカイオスとドーロスをもうけた。アポローンをイオーンの父とする文献はこれのみである。

プリアモスの娘

プリアモスの娘クレウーサ[18]は、アイネイアース(ラテン語:アエネアース)の妻で、アスカニオス(ラテン語:アスカニウス)の母。ウェルギリウス叙事詩アエネーイス』では、ギリシア軍によってトロイアが略奪されたさい、夫と我が子、アンキーセースとともにトロイアを脱出しようとするが、途中ではぐれて死ぬ。アイネイアースは無事に脱出したのち再びトロイアに戻り、クレウーサを探した。そこにクレウーサの霊が現れて語りかけ、新天地に向けて出港することを促して消える[19]

脚注

  1. ^ ピンダロス『ピュティア祝勝歌』第9歌14行。
  2. ^ a b シケリアのディオドーロス、4巻69・1。
  3. ^ オウィディウス『変身物語』1巻。
  4. ^ a b ヒュギーヌス、203話。
  5. ^ シケリアのディオドーロス、4巻69・3。
  6. ^ ピンダロス『ピュティア祝勝歌』第9歌13行1-18行。
  7. ^ シケリアのディオドーロス、4巻81・1。
  8. ^ アポロドーロス、1巻9・2。
  9. ^ ヒュギーヌス、1話。
  10. ^ ヒュギーヌス、239話。
  11. ^ ヒュギーヌス、243話。
  12. ^ オウィディウス『変身物語』1巻452行-567行。
  13. ^ アポロドーロス、1巻9・28。
  14. ^ a b アポロドーロス、3巻15・1。
  15. ^ パウサニアース、1巻28・4。
  16. ^ アポロドーロス、1巻7・3。
  17. ^ アポロドーロス、1巻9・4。
  18. ^ アポロドーロス、3巻12・5。
  19. ^ ウェルギリウス『アエネーイス』2巻673行-794行。

参考文献

ウィキメディア・コモンズには、プリアモスの娘のクレウーサに関連するカテゴリがあります。
神々
オリュンポス神
オリュンポス
十二神
下位神
ティーターン
ティーターン
十二神
後裔の神々
原初の神々
海洋の神々
河川の神々
ポタモイ
冥界の神々
クトニオス
その他の神々
ニュンペー
オーケアニス
ネーレーイス
ナーイアス
プレイアス
ヘスペリス
その他
怪物
英雄
出来事
アイテム
神殿
原典
芸術
関連項目
  • ポータル 神話伝承
  • カテゴリ カテゴリ